目黒は、清水商店街の一角に〝小さなフランス〟が存在する。オーガニックカヌレ専門店「Dan la Poche(ダンラポッシュ)」。開店から約7年、毎回完売が続く人気店を一人で切り盛りする内藤裕子さんにとっての「サステナブル(持続×自続可能)」なライフスタイルとは?自分の「好き」や「心地よさ」を信じる強さに縁取られた、彼女らしい「幸せのカタチ」に触れてみたい。
私がオーガニックカヌレを作る理由
——「やさしさ」という点では、オーガニック素材にもこだわられていますよね。
趣味で作り始めた当初は、自分が口にするものだから、安心・安全で美味しい食材にこだわっていました。今では、同じ想いをお客さん側に立っても抱いています。
それとともに、オーガニック食材を作る生産者を支援し、その裾野の拡大に貢献したいという気持ちもあります。多少高価でも〝未来への投資〟という意味で、一人ひとりがやさしい選択(購買活動)を重ねていく。そのサイクルが、サステナブルな社会へと繋がっていくのではないでしょうか。
——普段からオーガニックライフを実践されているのですか?
調味料にはこだわる方ですが、その他の食材に関しては、「卵は平飼いがいいな」「なるべくオーガニック野菜を選ぼう」という感じで、お財布とも相談しながら、無理のない範囲でオーガニックライフを楽しんでいます。
カヌレとワインと、サステナブル(持続×自続可能性)と。
——ワイン好きの内藤さんおすすめの、カヌレ×ワインの楽しみ方を教えてください。
バニラビーンズとラム酒を使った「プレーン」は赤、ティムールペッパーの風味が香る「スパイスカヌレ」は白に合うと思います。私は、白ワインが好きなので、カヌレをちょっとずつガリガリと齧りながら、ワインタイムを楽しんでいますよ。
——「ダンラポッシュ」といえば、目印ともいうべき、個性的な三角の包み紙もお洒落ですよね。
以前、フランスでお菓子を買ったとき、あの三角の包み紙に入れて渡されて、「かわいい!」ととてもテンションが上がったので真似しました(笑)。紙と紐だけを使ったエコ包装でもあるんです。
——「エコ×かわいい」なんて最高ですね!
日本の「エコ」や「サステナブル」は、時に堅苦しく感じることもあるのですが(良くも悪くも真面目すぎて)、フランスでは、お菓子の包み紙が象徴するように、もっとリラックスした自然なスタイル。だからこそ、多くの人に受け入れられ、長く続けられるのではないでしょうか。
——お店のある「清水商店街」(目黒)には、新旧さまざまなお店が存在しますが、地域コミュニティとの関わりはいかがですか?
お互いのお店を利用し合ったり、しばらく顔を見かけないと「どうしているのかな?」と気になったり……。人同士の温かな結びつきに〝昭和の商店街〟のような雰囲気を感じて安心します(笑)。「ダンラポッシュ」を訪れたお客さんが近くのお店を知ったり、その逆もあったりと、良い相乗効果を生んでいると思います。
夢は生涯現役!「心地よさ」で繋がるネットワークを大切に
——内藤さんのウェルネス(ご自愛)タイムの過ごし方は?
最近、ようやく週休2日制にしたんです。それまでは1日だけ休んでいたのですが、家事などをしているとあっという間に過ぎてしまうので、心の栄養補給のためにも、休日をきちんと確保するようにしました(作業量は変わらずですが)。少し余裕ができたので、友人が営む飲食店に顔を出して、おしゃべりをしながら、美味しい料理とワインを楽しむなどのんびりと過ごしています。
——最後に、これから大事にしていきたい生き方&チャレンジしたいことを教えてください!
「自分にとって無理がない」というライフスタイルをキープしながら、「生涯現役」で働きたい思っています!やはり、お客さんとの交流は私のエネルギー源ですから。店頭で直接言葉を交わしたり、SNSでコメントし合ったりすると、みんな〝同じアンテナで繋がっているな〟と感じて嬉しくなります。
将来的には、カヌレ教室やレシピ本づくりもやってみたいですね。そうだ、カヌレ×ワインのペアリング会も楽しそう(笑)。好きなものから夢はどんどん膨らみます。
自分を楽しませる「好き」を辿る旅、それこそが人生と言えるのかもしれない。そうして集めた〝自分らしさ〟のカケラを、いつもポケットの中に——。
取材・文=中山理佐
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Dans la Poche カヌレ専門店
オーガニック小麦粉、平飼いの卵、甜菜糖…など、安心素材を厳選して、蜜蝋と銅型を使用して焼き上げる本格的カヌレ。ワインに合うカヌレがコンセプト。
住所:東京都目黒区中町1-36-6
営業日:土日祝日(13:30〜売り切れまで)